デザインコンセプト

時代が急速に変化し、平屋根の高層ビルが一般的になった今日、伝統的な建築物に目を移すと、屋根の先端が優美に、緩やかに傾斜して外へと反り上がる「飛檐(ひえんだるき/中国の伝統的な建築装飾の一つ)」という技法の美しさに、ただただ感嘆するばかりです。

「飛簷」は、伝統的な建築物において屋根の角に施された特別な工夫のことを指し、この設計は排水に適しているだけでなく、上向きの形状は室内に適度な日光を取り入れられるという利点も兼ね備えています。また、先端部分が上向きに反り、翼を広げたような姿と屋根のきらびやかな装飾、そして左右対称な姿は実用的でありながら、躍動感をも併せ持っています。

このクラシックなデザインからインスピレーションを得て「飛檐」をモチーフに、重厚感があり、左右対称という美しさを融合させた書体——それが「AR 鳳簷体」なのです。

デザインプロセス

字面の構造

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「AR 鳳簷体」は、お客様に芸術的で質の高い書体を提供することを目指し、字面の比率は優雅で読みやすい縦横比85%でデザインしました。

ふところや重心は全体的にどっしりとした重厚感のある書体でありながらも、余白のバランスは中庸かつ調和を保った書体となっています。

縦横のコントラスト

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視認性をアップさせる目的で「Arphic鳳簷体」では横線の太さを縦線よりやや細く調整しています。

デザインの特徴

  • 起筆
  • 横線
  • ストロークの両端のデザイン
  • 折れ
  • 左はらい / 右はらい / はね
  • てん

縦線の起筆は反り上がった飛簷を模倣し、緩やかに右上へと上がっています。

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セリフは屋根の端が上方に反り上がっている様子から着想を得ており、ストロークの端っこに適度な丸みを持たせることで、視覚的に柔らかさをプラスしています。

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梁や柱のような、どっしりとした重厚感のある書体をデザインしたかったため、基本的には装飾のないストロークを用いていますが、一部デザイン性を加えるため「飛檐」の要素を取り入れたストロークを採用し、ストロークの端は角張ったデザインにしています。

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一画一画書き進めていく中で「折れ」に差し掛かった際、少し筆を止め、再度書き進めるという作字方法を用いており、このようにすることで「筆跡」を残すというデザインにしています。

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「左はらい」、「右はらい」、「はね」部分は、屋根の先端が空に向かって伸びている「飛檐」の形を参考にし、収筆は流れに沿って軽く跳ね上げるデザインにしています。

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「てん」は「飛檐」の要素を取り入れ、収筆は流れに沿って軽く上向きに仕上げています。
「さんずい」のデザインは書道の筆遣いを模し、墨の飛び散った様子をイメージしています。
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書体見本